ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破 [映画感想]
凄かった!
今年見た日本映画の中で「最も凄い!」という作品かもしれない。僕は特に「エバ」ファンという訳ではない。
テレビの本放送中から「凄い!」という噂を聞いていた。が、実際に全て見たのは、人気が爆発してからテレビで一挙放送されたとき。
確かにこれまでのアニメとは違った。世代的に「鉄腕アトム」から見ているが、「ヤマト」でも、「マジンガーZ」でも、「ガンダム」でもない、これは何なのか? 興味を惹かれた。その頃。仕事で参加したテレビドラマ撮影。
出演者に明日香という、中学生の女の子がいた・・。
残念ながら名前は、ラングレーではない(ちなみに出演者には、ミサトもいた!)が、「エバ」が好きな子だった。出番待ちの間はずっと「エバ」の研究本を読んでいる・・。
昔はロボット・アニメというと、男の子がファンというのが相場。明日香。変っているなあ・・と思ったもの(実際『エバ』は女の子にも、人気があった)。
明日香は若いがなかなか鋭い子だったので、「エバ」哲学的な部分に惹かれるのか?とか考えていた。
そんな「エバ」の話。明日香と何度もした。でも、映画版の「1」しか見ていないとのこと。近所の古本屋で漫画版を買ってプレゼント。
「わーーー、これほしかったんです!」
まだ、中学生だった明日香。そこまで魅了した「エバ」の魅力とは何だったのか?
「エバ」は映画版も大ヒット。社会現象になった・・。
それから十年。リメイクともいえる「 ヱヴァンゲリヲン」の2作目が公開された。1作目は大ヒット。そして今回も劇場では、平日なのに列が出来ていた。あの当時の明日香と同じ、十代の女の子も数多くいる。
前作はテレビ版の初期の話をダイジェストにして、アクションシーン中心にリメクした感じだった。
が、今回は違う。大まかなストーリー展開は同じだが、より濃い内容。そしてアスカが以前より魅力的。なのに・・・。明日香、いや、アスカが・・。
可哀想とか、悲しいとか、それだけのことではない。
心から赤い涙が溢れる。誰もが言うことだが、単なるロボット・アニメではない。登場人物を殺すことで涙を誘おうとした「ヤマト」とは違う。
十代の子供たちのどうしようもない思いが、そこに詰まっている。やり場のない気持ちが溢れる。
大人たちは「使徒って何だか分からないなあ?」というだろう。
「説明不足の物語だ」と批判するかもしれない。でも、それは十年前も同じ。観客の世代が変った十年後の今も、なぜ『エバ』が若い人たちの心を掴むのか?」を考えるべきだろう。
「自分がいるべき場所」
十年前、それを見つけることができない時代だっだ。大人たちはその場所を示すことができないまま、十年を過ごしてしまったのだ。
監督の庵野秀明。前作ではその答えを出せなかった。でも、今回の作品でそれを示そうとしている。その「思い」が見る者の心を打つ。思い出すこと。十年前にある大手テレビ局のディレクターがこう言った。
「これからのドラマは『エバ』以前と、『エバ』以降になるだろうな」
確かにそうなった。ただ、『エバ』以上が十年経っても登場してない。多くの日本映画は時代を見つめようとせず、現実から目を背けてながら今も足踏みを続けているように感じてしまう。
当時は中学生だった明日香。今は20代半ばだろうか。あのあと「自分がいるべき場所」を探してか、芸能界を引退した。今回の「エバ」。見るだろうか?
もし、見ていれば、思うことは何なのか・・・。そして、あの頃の明日香と同じ十代は、何を感じるのか・・。
スラムドッグ$ミリオネア [映画感想]
みのもんたが出て来るCM。「見たい!」という気が起きなかった。
そして、すでに見た人の批評、読んでいない。HPも見ない。全くに中身を知らずに見た。
予想。レッドフォードが監督した「クイズショー」のようなテレビ界の内幕もの? でも、舞台はインドだし・・。
テレビでやっている「クイズショウ」はきっと、これが元ネタだと考えるけど、そこから想像すると面白くなると思えない。
何も知らずに見た。凄かった!!圧倒的だった。
最初、過去と現代と番組が平行して進むので、「何をしようとしているのか?」と思える。が、次第に時制が分かり、目的地が見えて来る。
目玉の話からもう、逃れられなくなる。遊園地に引きずりこまれて、ジェットコースターやフリーフォールに続けて乗せられるような感じ。
「これでもか!」「これでもか!」とパワーで押して来る。だが、シナリオも緻密によく出来ている。
ああ^^^^そういうことかぁ〜。と何度も唸る。
後半は手に汗握り、主人公たちを応援せずにはいられない。目の見えない少年との再会。***との再会。駅での***。
何度も涙が溢れる。そして「****る*女」を彷彿とするシーン。参りました・・。
「チェンジリング」以来(ついこの間だけど・・)の凄い映画だった。
エンディング拍手をしたくなるのは「レミーのおいしいレストラン」以来。ベースはハリウッド映画だが、これまでのアメリカ映画にないものが溢れる。
そばをすすり「この麺は腰があるねえ」とか微妙なところを味合うのが、ほとんどの日本映画だとすると、こちらはメガ・インドカレー・バガーのダブル。
フレンチ・フライ大盛り。ダイエットコークのLサイズのセットという感じか?かなりキツいが、満足感も大きい。
音楽でいうと、ローリング・ストーズのロック・コンサートのようだ。
「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」などの名曲を2時間、聞き続けるような乗り? もの凄いパワーで押しまくる。
これが現代の映画だ!という凄い作品。お勧め。
何? それではどんな映画か分からない? うん。分からないで見た方がいい。とにかくパワーのあって、面白くて、感動できる映画。
帰宅後。録画した「白い春」第2話、「ハンチョウ」第2話を見る。
タグ:スラムドッグ$ミリオネア
「チェ/28歳の革命」「チェ/39歳 別れの手紙」 [映画感想]
チェ・ゲバラ。映画では描かれていないが、最初は200人の仲間とキューバに乗り込んだ。
が、その直後に政府軍から攻撃を受け、ほとんどが殺される。残ったのは十数人。それでも、キューバ革命を成功させた。
ただ、彼はキューバ人ではなくアルゼンチン人。なのに、キューバのために命を賭けたのだ。そして市民のための新政府作り。
マイケル・ムーア監督の「シッコ」でも描かれた、あの医療制度の整った環境、アメリカが羨む国を作り上げたのだ。
そんなゲバラは新政府に居座り、権力者になることはなく、自分を求める新たな国を助けるために旅立つ・・。
キューバ政府との戦いでは何度も、絶対絶命の状況に陥った。仲間の誰もが「やはり、無理だ・・」と思え、絶望することもあった。
でも、ゲバラ。いつもこう言っていた。
「やればできる。何が足りないか?考えてみよう!」
そして、成し遂げたのである。その言葉に強く、励まされる・・。
タグ:チェ/28歳の革命
「チェンジリング」 [映画感想]
学生時代。正月映画というと邦画が「寅さん」。洋画は「007」にクリント・イーストウッドのアクションものが定番だった。
代表作はやはり「ダーティハリー」シリーズ。他にも「ガントレット」「ダーティファイター」「アルカトラズからの脱出」等々があり、イーストウッドというと単純明快。銃撃ちまくるアクション映画のスターという印象だった。
そのイーストウッド。今や巨匠クラスの大監督。重厚で素晴らしい名作を作り続けている。アクション映画に出ていた頃には、想像もしなかったことだ。そんな彼の新作「チェンジリング」。これもまた、本年度ベスト1か?という名作。
先日見た「ベンジャミン・バトン」も素晴らしかったが、或る意味でそれを超える。予告編を見ただけでは、行方不明になった子供の話だとしか分からないが、それがあんな話になるとは・・。
演出、物語、俳優、撮影、照明、音楽、その全てが素晴らしい。内容は地味だが2時間を超える長尺ものなのに、全く退屈せず、最後まで連れて行かれる。
「ミステックリバー」「ミリオンダラーズ・ベイビー」「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」と並ぶ、見事な作品。詳しく書きたいが、まだ封切られたばかり、興味ある方は何も知らないで見た方がおもしろい。
過酷なほど過酷。ダーティハリーが現れて、全てを解決してくれない現実。それを目を逸らさずに、まっすぐに見つめた重厚な社会派ドラマ。感動したり、泣けたりという映画ではないが、本当に素晴らしい一編だった・・。
(蛇足)「ダーティファイター」という映画は、イーストウッドがライバルの大男をボコボコに殴る話。けど、今は監督のイーストウッドが観客を、打ちのめす話。
K−20 怪人二十面相伝(下)ビギンズ [映画感想]
「カリオストロの城」のラスト。ルパンはクラリスを抱きしめようとして、自分を押さえる。金城武は、松たか子を抱きしめるがすぐに放す。どちらも、住む世界が違うもの同士。悲しい別れが待っている。
繰り返すが、パクったとか、真似したとかいうのではない。「カリオストロ」や「さらば愛しきルパン」「天空の城ラピュタ」等のオマージュとし、見事に実写の世界で再現し、別のドラマとして作り上げたのである。その着眼点が見事。想像もしなかった世界観である。
そしてエンディング。これも「バットマン ビギンズ」。物語が終わってから「K−20」とタイトルが出るのも、ここ2作の「バットマン」と同じ。
ルパンを二十面相に。その造形をバットマンに。カリオストロ公国を帝都に。見事な置き換えが成功して、冒険物語を成立させたのである。
ただ、それなら二十面相にする意味。あまりないような気もする。もともと彼は美術品を狙う怪盗(映画の中でもそうなっている)破壊兵器を狙ったりしない。権力者になりたいタイプの悪役ではない。二十面相でないキャラクターにした方がよかったのではないか? そこだけが引っかかる。
でも、これは多分、企画を通すためではないか? 本来はオリジナルストーリーにすればいいのだけど、それでは企画が通りにくい。
で、「怪人二十面相」を映画にするという建前でゴーサインを引き出し。「カリオストロ」の実写版を作った。そういう政治的なテクニックではないか?と考える。
いずれにしろ、日本を舞台にしては作るのが難しい「冒険活劇」。それを見事に日本で作り上げた1本となっている。
(この項、了)
K−20 怪人二十面相伝(中)クラリス・たか子 [映画感想]
映画監督たちはあまり言わないが、彼らが目指している映画というのがある。ときにはお手本にしたり、あるときはオマージュとして、あるときはその作品を自分流にして、作品を作ることが多い。
ジョージ・ルーカスは「フラッシュ・ゴードン」を目指して「スターウォーズ」と作った。黒澤明はジョン・フォードの西部劇に憧れて、時代劇を作っていた。
その監督が「何を目指しているか?」が分かれば、方向性や意味も理解できる。でも、それをよく「***パクりだ!」と鬼のクビを取ったように批判する人がいる。が、それは大きな間違い。
パクるというのは、自分では考えずに真似し、盗むこと。僕がいうのは、自分の好きな作品を理解。昇華し、自分なりのものとして、作ることである。
それでいうと、「k−20」は宮崎駿監督の「ルパン3世/カリオストロの城」のオマージュを目指したのだろう。昭和初期の町を舞台にしたのは「帝都物語」がやりたいのではなく、日本にカリオストロ公国を成立させるため。
松たか子がクラリス。お姫様だけど、泥棒(金城武)と共に行動。惹かれて行く。この関係。「カリオストロ」だけでなく、テレビシリーズの「ルパン3世」の最終回。「さらば愛しきルパン」にも通じる。
ラムダを操る少女マキ。クラリスよりも活発で、大きな機械も使いこなす。そういえば、あの話も偽ルパンが現れる話。それもこの映画と同じ構図。
あのときは銭形警部が実は、ルパンだったというオチ(もちろん、変装してルパンがなりすましていた。ラストに本物が登場)。それを「K−20」では明智小五郎が二十面相だったという反対の構図にしてある。
さらに松たか子が乗る小さなヘリ。あれは「天空の城ラピュタ」の羽根のある小さな飛行船がモチーフだろう。シータを助けに行く場面と、金城武を救出する場面がダブる。
また、クライマックスで爆破された塔から、金城武を救いだしたあとの場面はまるで、「カリオストロ」のラストシーン。
松たか子が「私も連れてって下さい」と言う。そのあとに「泥棒も覚えます!」と台詞が続くかと思ったくらいだ。
そして・・。
(つづく)
K−20 怪人二十面相伝(上)あの作品のオマージュ? [映画感想]
子供の頃。「少年探偵団」シリーズの愛読者だった。ポプラ社のシリーズ、全部読んでいる。が、今回の映画。予告編を見ても、内容を聞いても全く興味が持てなかった。なぜ、今、「昭和初期」で「二十面相」なのか? 企画意図が理解できない。
でも、意外に評版がいい。潜入感だけで判断してはいけない。想像を遥かに絶する展開が待っているかもしれない。
それと監督が映画「エコエコアザラク」の人。なかなかの実力派で、その後を期待していた。伝統的な日本映画の演出ではなく、アメリカンな感じがとてもよかった。その監督が今回の作品を担当。これは見なくてならない。
しかし、映画の前半。何をやろうとしているのか? やはり分からない。本格的に江戸川乱歩のおどろおどろしい世界を描く訳でもない。
といって「少年探偵団」の怪盗VS名探偵でもない。貧しい子供たちの話になったり。???? と思っていたら、金城武が特訓を始める。
「バットマン ビギンズ」の日本版をやろうとしてるのだろうか? ブルースウェインも特訓からスタートした。二十面相のマントや顔もバットマン似だし。
それを指摘する人も多い。が、やがて「本当は何をやりたかったか?」が分かる。誰もが知っているあの映画である・・。
(つづく)
タグ:K−20
「チェ・28歳の革命」 [映画感想]
「チェ/28歳の革命」
「チェ/39歳 別れの手紙」
両方見た。かなりの入りだった。若い人が多い。
僕以外に「この映画を見たい!」という人がいたことに驚き。
結構、ヒットしている。
今、その関連本を読んでいる・・・。
タグ:チェ/28歳の革命
「ウォーリー」感動です! [映画感想]
ウォーリーがイブを追って、宇宙船にぶら下がるところから。
もう、泣きそうだった・・。
ピクサーの作品は、本当によく出来ている。
「レミー」のときは、最終日が近くガラガラの映画館で見たが、ラストは1人拍手をした。
今回も、そんな映画だった。
アクション映画でもないのに、ハラハラして、ドキドキ。
ダメなロボットたちが最後に活躍する部分。自分もそこに参加している気持ちなる。
ウォーリーを待っているゴキブリさえも、愛おしくなる。
応援せずにはいられなくなり、思わず拍手してしまう。
そして文芸大作でもないのに、最後は感動して、泣ける。これが映画だ・・。
ハッピーになれる素敵な作品!
タグ:ウォーリー
映画「泣きたいときのクスリ」 [映画感想]
以前にお仕事とした俳優さんたち。その後の活躍が気になる。出演している作品があれば、出来る限り見るようにしている。
今回の映画は僕の監督作「ストロベリーフィールズ」で、主役の夏美を演じてくれた佐津川愛美さんの新作!
さっちゃんも、もう高校を卒業。20歳を超えたはず。でも、今回も高校生役。大丈夫かな?と思ったが、全然、違和感なし! いい役者は歳、関係ないのだ。
そして、相変わらず上手い! 表情が豊か。他のキャラのエピソードになると、多少退屈するが、佐津川の話になると、がぜん、面白くなる。
オヤジを尾行するときの、コミカルな歩き方。覗き見するときのドキドキした感じ。
ファミレスで同級生と話をするときの、ちょっとした目の動き。声のトーン。言葉のニアンス。ウエートレスとの笑える対応。そのリアクション。
凄い・・・。相変わらず天才女優している。
知り合いだから褒めている訳ではない。本当によくなければ、あえて書かない。
あのセンス。あの間の取り方。あの反応の仕方。なかなか、できるものではない。
日本のジョディ・フォスター。今も健在!