号泣。 [撮影21日目/道具屋&お寺]
演出部チーフが続ける。
「以上を持ちまして、真子役の相葉香凛さん。
みさと役の草刈麻有さん。三美子役の橋本わかなさん。トン子役の田辺愛美さん。
そして、八代先生役の波岡一喜さん。全編終了です!」
スタッフ全員から拍手が起こる。
すでに出番を終えたミチル役の平沢いずみと、デビー先生役のミッシェルも来ている。
花束贈呈。女優陣には演出部から。波岡君には女性スタッフから。
相葉香凛や草刈麻有たち。
さっきまで芝居で泣いていたのに、また号泣している。
涙をこぼすではない。号泣。
本当によくやった。最後まで素晴らしかった。
真子、みさと、三美子、トン子。そしてミチル。
本当によくがんばった。
(つづく)
最後のシーンもOK。 [撮影21日目/道具屋&お寺]
「よーーい、スタート!」
波岡一喜君の長台詞の場面。
予想通りに彼は、一度も台詞を間違えず、素晴らしい芝居を見せてくれた。
相葉香凛演じる真子たちも、全員がボロボロに泣いている。
「カッーーーーーーート!」
Aカメラ、Bカメラの映像はモニターで見ていたが、Cカメだけはモニターがない。
カメラマンにプレイバックをしてもらい確認。
映像も、芝居も文句なしだった。
「よし、OK・・・」
演出部チーフが聞く。
「このシーン。全て埋まりということでいいですね?」
つまり、これで撮影終了ということなのだ。
「はい」
夜のシーンなので、昼間だが室内は暗い。スタッフ総出で雨戸を開けた。
そして・・。
(つづく)
さよなら、真子。さよなら、みさと。(下) [撮影21日目/道具屋&お寺]
僕ら映画スタッフ。撮影をしたというより、
真子やみさとの世界にやってきたのだ。
真子の家にお邪魔して、両親に会い。
学校にも同行、浜田先生を知る。
舘山寺の書道合宿にも参加した。
真子やみさとたちと、行動を共にし、
「笑い」や「涙」を共にした、と言った方がいい。
書道部で三美子やトン子。そしてミチルと出会い。
その「喜び」や「悲しみ」も、一緒にわかちあった。
そこで、彼女たちの青春を見つめ、心からの声援を送った。
そして真子も、みさとも、他のみんなも。大きな成長を遂げた。
でも、もう撮影が終わる。僕らは現実の世界に帰らねばならない。
俳優たちとは、またいつか会うこともあるだろう。
でも、真子とも、みさととも、もう会うことはない。
三美子とも、トン子とも、ミチルとも、再会することはない。
映画の中の世界から、僕らは「現実の世界」に帰らねばならないのだ。
3年がかりで育てて来た、子供たちとのお別れ・・。
照明部から声がかかる。準備が、出来たようだ。
いよいよ、最後の撮影が始まる。
別れのラストカット。本番・・。
「よーい! スタート!」
(つづく)
さよなら、真子。さよなら、みさと。(上) [撮影21日目/道具屋&お寺]
スタートは3年前。2007年。その年にシナリオを書いた。
真子、みさと、三美子、トン子、ミチル。
5人の書道部員キャラを作った。でも、それは紙の上に書かれた文字だけの存在。
でも、その子たちが年月と共に、どんどんと成長して行った。
よく出来たキャラクターは作家の言うことを聞かない。
わがままを言ったり、主張し、暴れだした。
それぞれが個性を持ち、育って行った。
1年に渡った浜松のロケハン。
真子の家はどこ? トン子はどこで練習するの?
三美子が叫ぶ土手はどこ? みさとが自転車を走らせる場所は?
ミチルが書を破る場所は? 卓也がミチルと会うのは?
それらの場所が決まり、俳優たちが決まる。
そこにはもう作り物でない。浜松で生まれ育った真子やみさとたちがいた。
学校で勉強し、お好み焼きに寄り道し、お寺の先生を訪ねる。
映画撮影を超えて、そこには真子たちの世界があった。
この3週間。僕らはその世界を訪ね、真子やみさとの成長を見つめたのだ・・・。
(つづく)
いよいよ本番! [撮影21日目/道具屋&お寺]
モニターは隣の部屋に置かれた。
そこで芝居をする俳優たちを画面を通して見る。
照明の最終的な直しに入る。
それが終われば、撮影スタート。10分ほどで終わるはずだ。
やはり、寂しい。ふと見ると、持ち道具のモッチーがいる。
「もっちー。ヤバいよ。このままじゃ撮影終わっちゃうよ」
「そうですね。寂しいですね」
「モッチー。何か小道具を忘れてきました。
今から宿舎に取りに行ってきます!とか言って?」
「やですよ。次の仕事に差し支えますから」
「じゃあ、僕が急に***がほしいとか言い出すから、
今から宿舎まで取りに行ってきます!というのはどう?」
「駄目です!」
「そうだよね」
でも、今回の撮影。終了するのが寂しい。
それほどに楽しく、愛おしいものとなった。
(つづく)
寂しい気持ち [撮影21日目/道具屋&お寺]
撮影部、照明部の準備は続く。
カット数にすると、20カット以上。
通常で考えれば、3時間以上かかる撮影。
でも、カメラ3台で一気に撮る。
そして波岡君のこと。シナリオ3ページ以上の台詞も、
1度も間違わず、1回でOKを出すだろう。
真子(相葉香凛)みさと(草刈麻有)たちも気合い十分。
腕時計を見ると、午後3時。
撮影を始めれば30分ほどで、本日の撮影は終了となる。
いつもなら「早めに終わった!」と喜ぶところだが、
今日はクランクアップの日。この撮影が終わると、全て終了なのだ。
いつもなら、何週間にも渡る長い長い撮影が終わることは、うれしいこと。
でも、撮影が終わること・・・とても、寂しい。
もう1日、あと2日。撮影していたいくらいだ。
真子、みさと、三美子、トン子、ミチル。八代先生。
そして、素晴らしいスタッフのみんなと、もう少し撮影していたい。
こんなことは初めて・・。でも、その撮影も、いよいよ終わりを迎える。
(つづく)
波岡君の長台詞 [撮影21日目/道具屋&お寺]
波岡一喜君。長台詞がとても多い。
シナリオ1ページ分の台詞があったりする。
覚えるだけでも本当に大変。彼は時間さえあれば、1人になり
台詞を声を出して練習していた。
「台詞が多い!!」
と、ときどき叫んでいた。すまない。僕が書いたんだ・・。
でも、今回は波岡君の言葉で、若い人たちに大切なことを伝える。
とっても、とっても、重要なのだ。ある意味で金八先生の役割。
「でも、金八先生ほどじゃないだろ?」
「武田鉄矢さんって凄いなあ・・と改めて思いましたよ」
そんなことをいいながら、波岡君。本番になると絶対に間違わない。
心に伝わる言葉にしてくれる。
そして今日、最後のシーン。シナリオのページ3〜4ページ分の台詞。
その撮影が間もなく始まる。
(つづく)
タグ:波岡一喜
3台のハイビジョンカメラで撮影 [撮影21日目/道具屋&お寺]
最後のシーン。
雨のに打たれた真子(相葉香凛)とみさと(草刈麻有)ら書道ガールズたち。
八代先生(波岡一喜)の下宿を訪ねるシーン。
最後の1シーンだが、
1シーンといっても、その中でいくつものカットに分かれる。
出演者だけでも、真子、みさと、三美子(橋本わかな)、トン子(田辺愛美)
そして八代先生と、5人もいる。
それぞれのアップを撮るだけでも、何カットも必要。
だが、ここで太田組式撮影を選択。
3台のハイビジョンカメラで一気に撮影する。
(つづく)
あと1シーン! [撮影21日目/道具屋&お寺]
シナリオの最後のページを見る。
撮影が終わったシーンから、バツをつけている。
昨日のシーンと、本日午前中に撮影したシーン。
それを除くと、あと1シーンだ。
(つづく)
俳優たちの控え室 [撮影21日目/道具屋&お寺]
照明のセッティングに時間がかかるので
俳優たちの様子を見に、控え室へ。
お寺の一角の部屋をお借りして、控え室にしてある。
中では、真子(相葉香凛)みさと(草刈麻有)三美子(橋本わかな)の3人
次のシーンのために集中しようとしている。
かなり、難しいシーンなのだ。
その手前。すでに撮影が終了したミチル(平沢いずみ)とデビー(ミッシェル)。
「へへへ、見学者でーす!」
とか言ってる。
テーブルの上を見ると、台本。その裏表紙に寄せ書きの途中。
そう。本日が最後の撮影。
俳優たちはそれぞれのシナリオの裏に、寄せ書きを始めているのだ。
今、照明をセッティングしているシーン。
それが最後の最後の撮影である。
(つづく)