80年代後半はアメリカン・ロックの黄金期 [音楽について]
1980年代後半。
アメリカのロック界は本当に凄かった。
驚くべきは、1985年に
プリンスは「パープルレイン」を
マドンナは「ライク・ア・バージン」を
シンディ・ローパーは「ガール・ジャスト・ウォナァ・ハブ・ファン」を
そして
ブルース・スプリングスティ−ンは「ボーン・イン・ザ・USA」を
ヒットさせている。
映画界でも歴史の残るヒット作が同じ時期に出ることがある。
まさに、そんな黄金の年だった。
そして、80S後半戦
ストーンズが8年振りのツアーを行い
ポール・マッカートニーがソロになって初めて
ビートルズ・ナンバーの数々を歌い
マイケル・ジャクソン、マドンナが大活躍。
往年の人気バンドが次々に再結成した。
何とも凄い、5年間だった。
どのコンサートを見ても、日本人には勝てない。
パワーもセンスも凄い・・・ノックアウトだった。
そんな話、ここ何回か書いた・・。
パープルレイン=>http://www.youtube.com/watch?v=5l75skRMlXk&feature=related
(つづく)
ロック好きなのにクラシック? [音楽について]
ローリング・ストーンズに
ブルース・スプリングスティーン
というと、ロック中のロック。
そんなアーティストが好きな監督が作った映画・・。
さぞや映画の中でも、ロック音楽が登場するかと思いしや
エレキギターサウンドは
八代先生のテーマだけ。
あとは、クラシックをイメージした。
作曲家の遠藤浩二さんに見せた編集映像に入れた曲。
ほとんどがバッハとビバルディ。
それに「青い青い」ではなく「美しき青きドナウ」
さらには「天国と地獄」はオリジナルのまま使用した。
この辺、自分でも理由が分からないが、聴くのはロックだが
映画ではクラシックを多様する。
キューブリックを真似している訳ではないが、
既成の映画音楽では、何か違うからかもしれない。
「コロッケ」のシーンは
ビバルディのギター協奏曲。
そんな感じで、音楽を考えて行く。
てな、ところでいいでしょうか?
こ〜めぃさん。
(つづく)
トン子のテーマ [音楽について]
「スターウォーズ」では
それぞれのキャラにテーマ曲がある。
一番有名なのは「ダースベイダーのマーチ」
主人公ルークのテーマもある。
音楽でキャラを表現している。
ハリウッド映画でよく使う手だ。
僕も今回の「青い青い空」で実践した。
一番、記憶の残るのが「トン子のテーマ」
おちゃめで、コミカルで、可愛い。感じを伝える。
当初、トン子のテーマを考えたときこう考えた。
アニメでよくあるような、ユニークなキャラが出てくるときに使うような曲
いかにも!というのは、絶対にやめよう。
トン子も主人公の1人。
単なるコメディリリーフに感じる曲は駄目。
いろいろと考えていて、ある曲を思い出す。
「これだ! でも、何の曲だっけ?」
そう考えていて、思い出す。
前作「ストロベリーフィールズ」のために作ってもらった曲だ。
でも、結局、使わなかった。
それが実にトン子のテーマにピッタリ。
作曲家の遠藤さんに「そのイメージで!」言うと、
「じゃあ、その曲を使いましょう!」
そうか・・、ご本人の未使用曲。OKなのだ。
そんな訳で、トン子のテーマは
「ストロベリーフィールズ」の1曲を使うことになったのだ。
(つづく)
クライマックスの曲は? [音楽について]
むずかしかったのが、クライマックスの大会。
真子(相葉香凛)たちの演舞が終わったあとの曲。
大会で実際に流れもおかしくなく、
それでいて、主人公たちの思いを讃える曲にしたかった。
が、なかなか、思い浮かばない。いろいろと考えて、見つけたのが
「スターウォーズ/ジェダイの帰還」
その「特別編」の方のエンディング曲。
帝国軍に勝利したイウォークが歌って踊るシーン。
そのイメージだと思えた。
音楽イメージを伝える上で難しいのは、言葉で表現できないこと。
「悲しみ」といっても、いろんな曲がある。
アップテンンポの曲でも悲しみを表現できるし、
テクノサウンドでもできる。
なので、イメージする楽器も伝える。
ピアノなのか? ストリングスなのか?
そうすると、作曲家さんは僕のイメージを見事に音楽にしてくれるのだ。
(つづく)
作曲家との仕事。 [音楽について]
作曲家の遠藤浩二さん。
僕の作品のほぼ全部を担当してくれている。
「ストロベリーフィールズ」はもちろん。
モーニング娘。のドキュメンタリー作品も
「怪談・新耳袋」も、「風の娘たち」もそうだ。
そんな彼との打ち合わせ、ちょっと独特。
まず、編集を終えた映像を見ながら、音楽イメージを説明。
これは誰でも行うパターン。
でも、このときに見せる映像には、僕がイメージする既成の曲をすでに入れてある。
といって、その曲に似た曲を作ってほしいのではない。
方向性やリズムを伝えるためのもの。
例えば、3分間台詞なしのシーン「書と音楽のコラボ」という場面がある。
文字を筆で書くという動作。そのリズム。
どうも、舞踏会で踊るリズムと似ていると思えていた。
例えば「シャル・ウイ・ダンス」の曲。
或いは「美しき青きドナウ」。
全然、別物の2曲?と言われるかもしれない。
それを遠藤さんに話すと、
「ああ、どちらもワルツですよ」
なるほど・・・ということで、あのシーンは
ワルツを踊れる曲を作ってもらった。
そんな風に、イメージする曲を選び
映像につけて、見てもらう。
そんなふうにして音楽を作ってもらう。
(つづく)
登場人物もロック好き? [音楽について]
そんなだから、登場人物の設定も、
ミチル(平沢いずみ)は
ピンクフロイドとジョンレノンが好き。
という設定。
八代先生(波岡一喜)はご存知の通り
ローリングストーンズ・ファンで、
授業ではマイケルジャクソンの話をする。
そんなキャラ作りをするので、音楽家さんに
「このシーン。何か、音楽付けておいてね?」
なんて指示は絶対にしない。
どんなイメージのどんな曲なのか?
うるさく言う。上がって来た曲にも散々、文句を付ける。
でも、音楽担当の遠藤浩二さん。毎回、作曲をお願いしている方だ。
凄い!
僕があれこれ言ったイメージを超える曲。
いつも作ってくれる!!
(つづく)
映画監督は音楽がお好き・・・でない? [音楽について]
「青い青い空」の映画音楽の話に入る前に
映画監督と音楽について書く。
通常、映画監督という人。音楽をあまり聴かない人が多い。
同世代の友人監督は特にそうだ。
「音楽。何を聴くの?」
というと「何でも聴くよ」と言われる。
何でも・・という奴は、基本、音楽が好きではなく
流れてくれば、聴くということが多い。
「ユーミンのアルバムは1枚持っているよ」
レベルなのだ。日本映画が音楽を重要視していないのは、その辺が背景か?
友人の監督たちは、本当によく映画館に通うが
コンサートに行ったという話は聞いたことがない。
それに対して僕は「映画」よりも、「音楽」が好きかもしれない?
ローリング・ストーンズと
ブルース・スプリングスティーンのアルバム
全部持っている。
CDは何百枚あるのか?
iPodには7908曲が入っている。
アメリカ留学時代は毎週、ライブを聴きに行っていた。
チャックベリー、レイチャールズ、BBキング、
そんな人たち。驚くなかれ、ライブバウスに出ていた。
ローリングストーンズのコンサートは4日あれば、4日とも通った。
「学生時代にバンドをやっていたでしょう?」
と言われるが、情けないことに自分で演奏はできない、
けど、ひとつ間違っていたら、映画監督ではなく
ミュージシャンを目指したかもしれない。
(カメラをまわせなくても、監督にはなれる。
が、楽器を弾けないとミュージシャンにはなれない!)
つまり、格闘技ファンの監督なら、アクションシーンにこだわるように
僕は音楽が気になってしまう。
(つづく)
日本で一番忙しい音楽家 [音楽について]
「青い青い空」の音楽担当は
僕のほぼ全作をお願いしている遠藤浩二さん。
(前作の「ストロベリーフィールズ」では、あべさとえさんの歌う主題歌「空の模様」
も遠藤さんの作曲)
毎回、素晴らしい曲を書いてくれる。
15年前からお願いしているので、今回も作曲を引き受けてくれたが
今や彼は「日本で一番忙しい作曲家」と言われる超売れっ子。
古いおつきあいなので、受けてもらったが、
本来なら、なかなかお願いできる方ではない。
あの「十三人の刺客」も、遠藤さんが音楽担当。
(写真上。ポスターの両作品ともに遠藤浩二さんが音楽担当。
あっ、波岡一喜君も両作品に出てるね)
さて、今回の「青い青い空」音楽制作開始だ・・。
(つづく)
シンガーソングライターに1年前から依頼 [音楽について]
今回の「青い青い空」では
少し違うやり方をした。
今回はまず劇中歌である「青い青い空」を作ることから始めた。
何度も書いたが、シンガーソングライターのあべさとえさんに
ロケ地である浜松に1年前に行ってもらい
作詞作曲をお願いした。
舞台となる町を見て、感じて、経験した上で歌を作ってもらう。
あべさんの歌は、ピアノの弾き語りスタイル。
それを基本として、音楽を決めて行く。
音楽もピアノを中心としたストリングスをイメージ。
やはり、浜松の美しい風景に合うのは、コンピューターサウンドより
小編成のオーケストラだ。
撮影後。さらに具体的に方向性を決める。
(つづく)
映画で音楽は重要でない? [音楽について]
映画というと「映像が大事」とよく言われ
古い監督だと「このシーンは重要だから、音楽はなしにして見せたい」
とか言うことがある。
「このシーンは間が持たないので、何か音楽を入れて盛り上げてほしい」
とか・・・音楽をBGM。まさにバック・グランウド・ミュージック
だと思い、重要視していない。
「音楽に頼らないことが大切」だと思っている人が多い。
そのせいか、映画を見終わったあと
そのテーマ曲を覚えている日本映画は極めて少ない。
対して、あの「ゴッドファーザー」はニーノ・ロータのメロディが蘇る。
「地獄の黙示録」を思い出せば
「ワルキューレの騎行」が聴こえてくるほど。
あのジョン・ウイリアムスの曲なしに「ジョーズ」はあり得なかっただろう。
思うのに、映画の力の半分は音楽ではないか?
それほどに音楽の力は大きい。
なので、毎回、映画を作るときは、シナリオ段階から音楽をイメージする。
前作「ストロベリーフィールズ」のときは
事前にいろんな曲を集めて、イメージ・サントラ版を作った。
それを聴きながら、シナリオを読んでもらった。
このシーンはこの曲・・と指定されていて
そのカセットテープを聴きながら、シナリオを読むという形。
それに対して、今回は少し違う方法論を取った・・。
(つづく)