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監督にとって映画は娘。 [編集作業]

P1170287.jpg

 作品というのは、監督にとって娘のようなものだ。

 何とか無事、この世に生み出し、

 多くの人に愛される存在になってほしい。

 だから、出来る限りのことをする。

 生まれ来る娘のためになら、全てを投げ打つ。

 だが、世の中には、生まれたばかりの子を踏みつけにする輩もいる。

 以前、こんなことを言い出した奴がいた。

 「この子の右腕いらないんじゃないの?」

 企業にとっては、単なる商品かもしれない。

 だが、監督にとって映画は娘。血の通った我が子だ。

 危害を加える者がいれば、誰であろうと戦わねばならない。

 自分が傷つき滅んでも、守るべき存在。

 相手と刺し違えてでも、守り抜く。

 踏みつけられ、歪められて誕生した子は、人に「愛」を伝えることはできない。

 でも、大切に愛情を受けて誕生した子は

 必ず、多くの人に「愛」と「感動」を伝えてくれる。

 何年にも渡って、伝えてくれる。

 そんな子供に育つように、命をかけて娘を守る。
 
 それが監督という仕事だ。

 (つづく)

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編集終了での出来はどうか?(下) [編集作業]

夕陽の練習.JPG


 俳優たちが見事な演技が胸を打つ。

 そんな場面がいくつもある。

 職員室のミチル(平沢いずみ)、土手の上のトン子(田辺愛美)

 目頭が熱くなる。

 そして、ラスト近くの**のシーン。

 ここは5人が全員凄い。

 相葉、草刈、橋本、田辺、平沢。本当に凄い!

 もう演技ではない。その顔を見ているだけで泣きそうになる。

 僕のシナリオや演出を超えた、十代の思いが胸を熱くする。

 編集を終えて、かなりいいものが出来そうな予感。

 でも、気をつけないと、この段階でバカなことをすると

 全てが壊れてしまうことがある。

 気を抜かずに作業にあたろう。

 あとは音楽、SE、整音、等を経て、完成へとたどり着く。

 (つづく)

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編集終了での出来はどうか?(中) [編集作業]

パルパルと入道雲.JPG

 かなり力の入った映画になっていた。

 僕自身が考えていた以上に中身が濃く、パワーがある。

 キラキラする青春があり、

 微笑ましい笑いがあり、

 涙があり、感動があった。

 よくある軽めの青春ものではない。不真面目なギャグで笑わせるドラマでもない。

 まじめに時代と向き合った作品。

 十代の子供たちの物語。

 そして、浜松の風景が美しい。

 主人公たちを優しく包む浜松の町。物語を暖かいものにしている。

 1年がかりで撮影した浜松の春夏秋冬。

 本当に美しい。やはり、浜松は最高だ!

 物語の方。感動シーン。いくつもある。

 コロッケの場面。相葉香凛と草刈麻有が素晴らしい。

 撮影時のエピソードはまた書くが、ぐっと来るものがある。

 土手の下の三美子(橋本わかな)シーンも凄い。

 ここは反則だろう!というくらいのストレートだ。

 そして。

 (つづく)



 
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編集終了。出来はどうか?(上) [編集作業]

P1170282.jpg

 編集で気をつけねばならないのは、

 いくらそのシーンがうまく出来ても、

 全編を通して見るとよくないことがあること。

 また、そのシーンだけ見ると退屈しても、

 前後のシーンがあることで盛り上がることもある。

 なので、一応最後まで編集したら、通して作品を見る。

 僕の場合。仮の音楽や効果音も入れる。

 音楽が入ることで、感動シーンになるのに、それがないばかりに退屈だと思えて

 編集を直すと、今度は音楽を入れたときに、感動できないことがある。

 あと、日本映画の場合。

 「このシーンは長いなあ。もっと詰めよう」

 とかいって、短くしてしまう。

 だが、編集段階で長いと思っても、そこに音が入り音楽が入ると

 ちょうどよくなって、感動シーンになることが多い。

 どうしても、日本映画での音楽の扱いは軽く、

 バックで気づかないで流れているもの。という認識でしかない。

 音楽の効果を考えた上の、編集ということをしない。

 だから、僕の場合。イメージする音楽等を流し、完成状態が想像できる形にして見る。

 さ、そうやって見た「書道♡ガールズ」

 どんな感じになったのか?


 (つづく)


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不思議の国への旅(5) [編集作業]

P1090604.jpg

 思い出した話がある。

 あるベテラン俳優。渋い中年親父を演じると光る。

 彼はときどき、事件を起こす。暴力行為等で警察に捕まったこともある。

 インタビューで言っていた。

 「そのときのことを考えると、必ず暴走刑事とかヤクザの役をやっているときなんです。

 撮影が終われば切り替えて、自分に戻るようにするんですが、どうも役が完全に離れない

 みたいで・・」

 その気持ちとてもよく分かる。

 編集しているときも、近い感覚。

 ただ、演じるのと違って、ダイレクトに役=自身がリンクしないこと。

 不思議への旅のようなもので、さらに異常な感覚にさらされる。

 現実に戻ってくると真っ白になり、何もできなくなるが

 真子やみさとに会えたこと。

 三美子やトン子。ミチルに卓也が元気にしていたこと。

 とても、うれしかった。

 とか、書くと「頭おかしいんじゃない?」と言われそう。

 編集という作業を伝えること。やはりむずかしい。

 
(つづく)

 
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不思議の国への旅(4) [編集作業]

P1170312.jpg

 そんなふうにドラマの世界に、タイムスリップしているとき

 電話をかけて来られると、いっきに現実に引き戻されてしまう。

 そして、再び真子たちの世界に戻るには、何日もかかる。

 現実に戻っても、気持ちは引きずったまま。

 みさと(草刈麻有)の悲しいシーンを編集していると

 コンビニに食料を買いに行くときも、悲しみを引きずる。

 そこでコンビニ店員が無神経なことをしたりすると

 「だから、大人は嫌いなんだよ!」

 と叫んで、モップで殴りそうになる。

 これが八代先生(波岡一喜)のシーンだと大変だ。

苛つくことがあると、即、殴り込みだ。

 

 (つづく)

 
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不思議の国への旅(3) [編集作業]

IMG_5683.jpg

 撮影現場では、カメラの後ろにいて

遠くて分からなかった真子の目の動き。

 編集中。いや、真子の世界に迷い込んだ僕は、それを間近で見る。

 ああ、真子はハマコー先生に呼び出されたとき、こんなに不安だった。

 みさとが砂浜で告白したとき。こんな悲しい顔をしていたのか。

 タイムスリップして、あの瞬間に戻り。

 真子やみさとたちの青春を見つめる。

 少女たちが悲しいときは、一緒に悲しみ。うれしいときは一緒に喜ぶ。

 ハマコーに会いに行く真子の姿に「真子!がんばれ!」と声援を送る。

 ミチルが職員室に登場したときは、

「みちる! ありがとう!」と涙が溢れる。

 ハマコーが裏工作をしているときは、怒りが吹き出してくる。

 「だから、大人は嫌いなんだよ!」

 と、みさとと同じことをつぶやいてしまう。

 (つづく)

 
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不思議の国への旅(2) [編集作業]


P1150997.jpg

 今回の映画「書道♡ガールズ」のクランクアップのとき

 もの凄く悲しかった。

 1ヶ月以上も一緒に旅してきた高校生の真子やみさと、

 別れなければならなかったからだ。

 もちろん、演じてくれた相葉香凛や草刈麻有とは、また会う機会がある。

 でも、真子やみさととは、これでお別れなのだ。

 三美子とも、トン子とも、ミチルとも、さよならしなければならない。

 「真子はあの大会が終わったあと、どうしているんだろう?」

 「みさとは書道部続けているのかな?」

 そんなことさえ考える。

 そして編集が始まった。

 映像を繋いで行くと、あの懐かしい真子たちの世界がそこに広がって行く。

 うるさいお母さんがいて、のんきなおじいちゃんがいて

 ハマコー先生がいて、湖があり、古い町並みのある素敵な町が存在した。

 僕はまるで幽霊になったように、姿形はないが

 真子たちの町で、あの大会までの日々をもう一度体験することになる。

 (つづく)


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不思議の国への旅(1) [編集作業]

P1170281.jpg

 かつてなく厳しかった今回の編集。

 それだけに、いろんなことを考えた。

 業界の人間でさえ、なかなか理解できない編集作業。

 一般の人はもっと分からないだろう。

 連絡を控えてほしいとか頼むと、「何を失礼な! 二度と電話しないよ」と
 
 言われたこともある。で、編集作業とはどういうものか?伝えるため
 
 何年か前から使う表現が「霊が降りてくる」だ。

 まさにそういう感じなのだが、今回、編集をしていて

 感じたことがある。

 編集とは、現実を離れ、ドラマの世界に入り込むことのようだ。

 そう「不思議の国のアリス」のように、現実から非現実への旅。

 今回でいうと、真子やみさとに会いに行く旅なのである。

 (つづく)

 



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神経を研ぎ澄ます(下) [編集作業]

 そのために編集時は神経を、最大限に研ぎ澄まさねばならない。

 言い換えれば、雑踏の中で録音したオーディオ・テープの

 ささやくような声を拾うために、

 最大ボリュームで聞き続けるようなもの。

 顕微鏡の最大倍率で、

 小さなウイルスを見逃さないようにするようなもの。

 同じように編集は、感じる力を日頃の十数倍に上げる

 そして、映像素材を見る。

 そんなことを1ヶ月も続けていると、神経も感覚も研ぎ澄まされすぎて

 日常生活に戻れなくなる。人と普通に話ができなくなる。

 社会で暮らしていると、ときどき無神経な人がいて

 無神経なことをされる。こちらも鈍感でいた方が傷つかずに済むことが多い。

 編集モードのままだと、日頃の10倍のショックを受ける。 

 だから、編集を終えてもしばらくは日常に戻れない。

 リハビリに時間がかかる・・。

 (つづく)


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