悲しき少女たち(2)最後のチャンス [想い出]
ある演劇学校。酷い状況だった。
経営者が映画界をまるで知らない人。
俳優になるためには、どんな勉強をすればいいか分かっていない。
はっきり言うと素人である。
演劇学校といいながら、生徒たちに無意味なことばかり教える。
なのに人集めはうまく、生徒は大勢いた。
皆、女優やタレントを夢見ていた。
健気な子が多く、間違った教えでも真剣に学ぼうとする。
が、いくらがんばっても、それで俳優になれるはずがない。
無意味なレッスンで年月を無駄にした上に、大きなチャンスを逃す。
僕のクラスだけでも、プラスになることを!と、がんばった。
素質があり、成長する子がいた、
映画でも、ドラマでも、通用する。
オーディションに出しても大丈夫だ。
なのに校長はこういう。
「まだ、そんな段階ではありません。
もっともっと努力して、実力が着いてからですね・・」
何年も前からオーディションに行くこと。禁じていたのだ・・。
一番、輝いている20歳前に・・
一度もオーディションを受けたこと、なかった・・・。
オーディションに行くのも勉強なのだ!
それを禁じてどうする?
何より女優は、20歳までにスタートしないと駄目。
その子は結局、俳優にはなれなかった。
「主役を演じなくてもいい。有名になれなくてもいい。お芝居をしたいんです・・」
その子はそう言っていたこと。思い出す。
結局、僕は新作で多忙になり、講師を辞めることになった。
その子に何もしてあげることは、できなかった・・。
悔しい。間違っている。
あの頃の思いがダブる・・
高校時代のことだ・・。
(つづく)