悲しき少女たち(1)三美子 [想い出]
先に書いた「少女たちの映画を撮る理由」
とても好評だったので、もう少し書く。
以前、演劇学校で講師をしていた。
いろんなところから声がかかり、通算10校以上で教えた。
これでも生徒には人気があって、
代打で行った学校でも後日。たいていレギュラー講師になった。
が、撮影が始まると、何ヶ月も学校へは行けなくなるので
辞めなければならない。
ある学校、三美子のような子がいた。中学生。
人と話すことができない。でも、演劇学校に通い、友達ができた。
人と話すことができるようになった。
その子、凄く素質があり、芝居が抜群にうまかった。
異常に人見知りするのに、舞台に立ち台詞を言うと別人。
どんどん成長した。
水を得た魚とはこのこと。素朴な笑顔が素敵だった。
講師からも可愛がられ、生徒の間でも人気者になる。
なのに、親は高校進学を優先。学校を辞めさせてしまう。
演劇は大学を卒業するまで、させないという。
「大学を出てからなら、女優を目指しても構いません」
そういうが、
その子はもう女優にはなれない。
大学を出てからでは遅すぎる。
やがて、その子は学校に来なくなった。
本当にまっすぐで、がんばり屋の子だった。
その子の親、こういっていた。
「私は何よりも娘のことを一番、考えています・・」
(つづく)