友人の話(2) [想い出]
でも、デビュー作の公開を控えた若い友人の前で、
弱気なところは見せられない。
僕も・・がんばらねば・・・・。
やがて、彼の映画は公開。劇場で見た。
女子高生が死んで行く物語。美しくも悲しいストーリー。
どうしても形にしたい映画だったという。
というのも、彼が幼いとき。
高校生だった姉が、交通事故で亡くなっていた・・。
その思いを映画に込めていたのだ。
だからきっと「ストロベリー」を見たとき号泣したのだろう。
クライマックスのマキ(谷村美月)の台詞が胸に刺さった。
「夏美。お前は死ぬなよ。オレの分も長生きするんだぞ!」
そして台詞にはないが、こう聴こえたはずだ。
「そして必ず映画を完成させて、みんなに見てもらうんだぞ!
諦めちゃ駄目だぞ!」
きっと、お姉さんが激励してくれている声が聴こえたはず。
彼の映画を見ると「ストロベリー」と重なる部分がたくさんあり、
ああ、同じ思いで映画を作っているんだ・・と痛感した。
「ストロベリー」は死んだ誰かではないが、
去って行った友達をモデルにしている。
映画監督になりたい友人。
ミュージシャンを目指した友達。
俳優を夢見た仲間。
横浜にいた頃。まわりにそんな友人がいた。
僕も映画監督を目指していて、彼らと自主映画を作っていた。
しかし、友人たちは次第に夢破れて、横浜を去って行く。
そんな中の1人。こういった。
「俺たちはもう駄目だけど・・夢破れて、もう駄目だけど、
太田にはがんばってほしい・・・。
お前なら必ず監督になれるよ・・・。
お前が作った8ミリ映画を見ても、センス感じる。
だから、必ず、監督になってくれ!
オレたちの分も、がんばってほしい・・」
そのときの言葉を「ストロベリー」のマキ(谷村美月)の台詞にした。
僕が夢破れた友人たちの想い出を「ストロベリー」に託したように
その友人は死んだ姉への思いを、自作に託したのだ。
作り事ではない「思い」は、
その事実を知らなくても観客の胸を打つ。
僕も負けてはいられない。
次回作「青い青い空」が完成すれば・・・死んでもいい・・。
遺作になってもいい・・。
そう思いながら、何もできない自分がいた・・。
(つづく)