大切にしたいもの(3)物語ーシナリオ [撮影準備!]
映画製作ではときどき、撮影の直前にこんなことを言いだす人がいる。
物語の一部を変更しろ!
だが、その段になっての変更は、物語の崩壊を招く。
ストーリーというのは、石垣を積み上げて行くようなもの、
時間をかけて、さまざまな形の石を積み上げて行く。
その上に、「テーマ」という美しい天守閣を築くのだ。
物語を一部変更するというのは、その石垣の一部を別の石と取り換えるということ。
同じ形の石なんて、そうあるものではない。
四角いブロックではなく、ごつごつの大きな石を積み上げているので
似たような石でも、入れ替えると隙間が空き、全体に影響。
最後には天守閣が崩れたりする。それが物語というものだ。
映画界。その辺が分からない人が多い・・
例えば、シナリオが完成してから「主役は男より、女がいいな!」とか言い出す。
そんなことは企画段階で議論することなのに、思いつきでシナリオ完成後に言う。
スタッフはパニック! 男=>女に直せば済むものではない。
たいていの場合は、物語もテーマも崩壊してしまう。
細部であれば、多少の直しができるが、
最初に決めたテーマ。ストーリー。設定を変更すると全てが崩れる。
シナリオは緻密な計算で時間をかけて積み上げられたもの。
短い時間で再構築することはできない。
物語を大切にすること、いい映画を作る上でとても重要なのだ。
(つづく)