11月11日、「1」が4つ並ぶ日の物語・第2部 (5)美しい故郷を見せたかった [映画「ストロベリーフィールズ」]
もし、コンサートで、キーが外れたピアノを「弾いてほしい」と、言われたら。
ピアニストがそう言われたら、どうするか? 担当者は言う。
「全部じゃありません。キーが外れてるのは1つです。観客は気付かないですよ」
その人は大したことだと、思っていない。
でも、そんな場合。ピアニストは「弾けません!」と断るはずだ。
ビデオ上映はそれより酷い状態である。キーが半分以上外れているピアノのと同じ。
映画スタッフもピアニストと同じ。アーティストであり、職人。
心血注いで映画を作る人々。
ビデオ上映は、その人たちの努力を踏みつけにする行為なのだ・・・。
いや、スタッフのためだけではない。もっと、大切なことがある。
「ストロベリーフィールズ」での撮影、
スタッフは田辺の町をどうやって、映像にするか?。
血の出る努力をして、最高に美しい田辺を描きだした。
その最高に美しい田辺の映像を、地元の方に見て頂きたいのだ!
「これが田辺ですよ! これが我々の故郷です。本当に美しい町でしょう!」
そう伝えるのも、映画のテーマだった。
だから色の汚いビデオ上映の映像は、見せられない。
見せてはいけないのだ・・・。
(つづく)