富士屋マーケット物語(6ー終) [epilogue]
ーーーそうですか・・
さびしいけど。来れてよかったです。
「また、LAに来ることがあったら、寄ってね。今年いっぱいは営業しているから」
オデンおじさんの娘さんはそう言って、見送ってくれた。
・・・僕は・・・店を出る・・・。
さまざまな思いに、打ちのめされていた。
やっと知っている人に会えたという喜び。
でも、あのオジさんが亡くなっていたという現実。
そして、オジさんの父が広島出身だということ。
20年の歳月を経て知ることができた。
もし、今回、LAに来ることがなければ、彼が亡くなったことも
広島のことも、
店は営業していたが、年内で閉めることも
何も知らずに、僕は東京で生活していただろう。
でも、あの頃の想い出を共有できる人と出会えたこと
本当に嬉しい。
けど、同時に淋しい・・。
嬉しさと、淋しさと、訳の分からない涙が溢れる。
僕が帰国して20年の間。
映画監督を目指し奮闘している間に
ここLAの小さな食料品店では
オデンおじさんが働き続く人生が続き、それはやがて終わりを迎える。
あとを継いだ娘さんの人生。またそこにあり。
今年で、この店の物語も終わる。
20年の年月。感じずにはいられない・・。
(つづく)