ミチル/「青い青い空」以前の物語(4)愚かな日本人 [秘密シリーズ]
ミチルは2年生の新学期から、日本の高校へ編入した。
が、意外な現実を知る。
クラスメートたちは、自分の意見を持たない。
アメリカでは信じられないことだ。
真剣に勉強しないくせに
成績に一気一優して生活している。
伝統ある日本文化をバカにして、
見向きもしない。
自分の存在が何なのか? 自分の意味は何なのか?
考えもせず、女子は「男子」や「タレント」の話ばかり。
「何て下らない人たち・・
これが日本人の姿なの・・・?
これが伝統も文化もある、日本という国の現実なの!
失望の連続。こんな国に生まれ育ったことを
誇りにして、私はアメリカで生きて来たの・・」
同級生がバカに見えて仕方がなかった。
ある日、帰り道。クラスメートの男子が声をかけてきた。
「ブルースのコンサートは行ったことある?」
「ジャクソン・ブラウンは?」
若いくせに、古いロックをよく知っていた。
「ニューヨークは行ったことある? どんな街?」
「僕もいつかアメリカへ行って、ミュージシャンの勉強したいんだ!」
そんなことを言う。でも、何か子供ぽい。
彼の名前は卓也。弟にも子供扱いされるようだ。
最初は「気があるのかな?」と思ったが、本命はクラスにいるようだ。
ミチルもその気はない。
けど、アメリカの話ができること。嬉しかった・・。
家に帰るとお気に入りの一眼レフを持ち、あたりを歩く。
1人で撮影をしてまわる。週末はおばあちゃんの家で、書道練習。
「友達なんていなくても平気・・」
ただ、学校の休憩時間、教室にいるのが耐えられない。
程度の低いクラスメートの顔を見るのも嫌だ。
ミチルは1人で校内を彷徨った。
あるとき、化学の実験室前を通ると、
ピンクフロイドの歌が流れて来た・・。
それも「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」だ。
「・・・誰が・・・聴いているんだろう?
こんな曲を聴く人。この学校にいるなんて・・」
(つづく)