太田組式キャスティング(1)役者に合わせてシナリオを直す! [監督のお仕事!]
通常、シナリオを書くときは細かくキャラクター設定をする。それに合わせて俳優を探す。
でも、なかなか、ピッタリな俳優は見つからない。
キャラを100%とすると、見つけた俳優は70%であることが多い。
イメージの90%とか、まずいない。
例え40%でも「人気アイドルだから知名度がある」とかいう理由で、キャスティングしてしまう。
監督もまた「俳優は努力して役に近づくものだ!」とかいい、絶対に不可能な役でもやらせたりする。
映画作りは俳優の養成講座ではない。
昔の映画界には役者を育てるという慣習があったが、今はそんな余裕はない。時間も製作費も足りない。
その中で感動的な作品を作られねばならない。
そこで僕が実践しているのは、キャラ作りのときに、ガチガチに性格を作ってしまわないこと。
幅を持たせておく。シナリオとしては問題がある。
ベテランのライターが読めば「キャラが弱い!」と指摘するだろう。
でも、シナリオが最終勝負ではない。あくまでも途中段階。そこで100点を取っても意味はない。
個性的なキャラを作ることで、キャスティングが困難になり、結果60%の俳優しか見つからなくなる。
そうなれば、シナリオが100点でも、できた映画は60点ということになる。
けど、役に幅を持たせておいて、俳優を探す。もちろん魅力的であることは必要。そして、その子の魅力を取り入れてシナリオをもう一度直す。
さらに、撮影時にその子の良さを引き出す。
「俳優を役に近づけるのではなく、役を俳優に近づける!」
のである。つまり、作られたキャラの魅力ではなく、俳優本人が持っている魅力を前面に出す。
自主映画時代からの僕の作品は全て、その方法論でやってきた。
毎回、「出演者がよかった!」「イキイキしていた」と言ってもらえるが、その答えが「役に俳優を近づけるのではなく、本人に役を近づける」方法論である。
(つづく)