太田組式キャスティング(3)「リング」「女優霊」の巨匠 [監督のお仕事!]
脚本家の高橋洋さんである。「リング」「女優霊」を書いたマスター・オブ・ホラーである。
「シナリオ上で役に幅を取って書いてあるので、あの演出が可能なのだ」
さすが巨匠。よく分かったなあ・・という感じ。ある映画雑誌にはこう書いてくれた。
「そして、入念なロケハンがあってこそ。高いレベルの映画になった。美香が死神に連れ去られるシーン。あの場面の撮影と編集で上がる効果。それを超えたものになっている。通常はありえないこと。だが、理屈を超えて、それを成し遂げたのは入念なロケハンの成果だと思える」
これも「さすが」だった。高橋さんは「入念なロケハン」という言い方をしている。その意味は「時間をかけて場所を探した」ではない。
時間や労力ではなく、僕のロケハンは先に説明した「俳優」=「役」と同じ方法論なの。
役と同じようにシナリオに書いた「場所」にも幅を持たせている。なので、ロケハンはシナリオに書かれた「場所」を徹底して探すのではなく、いい場所が見つかれば「シナリオ」の方を直す。
物語自体を変えることはできないが、流れが同じなら多少の変更は可能。これは制作部にはできない。監督でもちょっと困難。ストーリーを変えても、テーマを変えてはいけない。
でも、物語というのは、石垣のようなもの。途中の1つを別のものに取り替えると、上のお城まで崩れることが多い。それを崩さずにできるのは脚本家だけ。だから、僕自身がロケハンしなければならない。
「ストロベリー」のときは、それをさらに進めたロケハンをした。
(つづく)