演劇学校で出会った子供たち(1)三美子のような少女 [アンコール]
以前、演劇学校で講師をしていた。
いろんなところから声がかかり、通算10校以上で教えた。
これでも生徒には人気があって、
代打で行った学校でも後日。たいていレギュラー講師になった。
ある学校、三美子のような子がいた。中学生。
人と話すことができない。でも、演劇学校に通い、友達ができた。
人と話すことができるようになった。
その子、凄く素質があり、芝居が抜群にうまかった。
異常に人見知りするのに、舞台に立ち台詞を言うと別人。
どんどん成長した。
水を得た魚とはこのこと。素朴な笑顔が素敵だった。
その子の夢はいつしか”女優になること”になる。
講師たちからも可愛がられ、生徒の間でも人気者。
なのに、親は高校進学を優先。学校を辞めさせる。
演劇は大学を卒業するまで、させないという。
「大学を出てからなら、女優を目指しても構いません」
そういうが、
その子はもう女優にはなれない。
大学を出てからでは遅すぎる。
やがて、その子は学校を辞める。
本当にまっすぐで、がんばり屋の子だった。
その子の親、こういっていた。
「私は何よりも娘のことを一番、考えています・・」
(つづく)
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