スプリングスティーン in LAスポーツ・アリーナ (中編) [コンサート]
子供時代からエルビス・プレスリーに憧れ、
第二のボブ・ディランと言われて、
ロックン・ロールを歌い続けたブルース・スプリングスティーン。
1973年のデビュー作「アズベリーパークからの挨拶」から
1975年の「明日なき暴走」。1980年「ザ・リバー」
そして大ヒット「ボーン・イン・ザ・USA」
デビー以来続いたひとつの時代、終わろうとしているように思えた。
実際、このあとのブルースの作品を見ると、それが現れている。
1992年 『ヒューマン・タッチ』
1992年 『ラッキー・タウン』
1995年 『ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード』 2002年 『ザ・ライジング』
2005年 『デビルズ・アンド・ダスト』
皆、地味で心に染みる歌ばかり。
そう。第二のディランと呼ばれたブルースは
そのボブ・ディランがアコースティクギターを置き
エレキギターに持ちかえたのと、逆の行動を取った。
映画界でいえば
「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」
と時代劇アクションを撮り続けていた
黒澤明が晩年は、「影武者」「乱」「八月の狂想曲」
と地味な文芸作品を撮ったのと同じことなのか?
スピルバーグも「ジョーズ」「未知との遭遇」「インディジョーンズ」と
派手なアクションものを撮っていたのが
やがて、「カラーパープル」「シンドラーのリスト」
地味なヒューマンドラマを撮り出したのにも似ている。
数年前、スピルバーグは久々に「インディ」シリーズを撮ったが
もう昔のパワーがなく、年齢を感じさせた。
作家はひとつの時代を終えると、次のステップに上がり
後戻りはできないものなのだろう。
その意味で「トンネル・オブ・ラブ」ツアー
ブルースの一時代の終章であり、新たなスタートと言えた。
(つづく)