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後輩監督を悼んで(4)映画に込めた思い [日々報告2008]

ブリュレのポスターs.jpg

 友人の映画監督・林田堅太の映画葬。そこで彼が、次回予定した作品の話を聞いた。

 広島が舞台。原爆が落ちる日の物語で、ヒロインの女子高生の青春が一瞬で終わってしまうというもの。
 はかなく消える10代の女の子の命。それが彼の中で、ライフワークであり、繰り返し取り組まねばならないテーマとなっていたのだろう。それで僕の映画に、あそこまで感動してくれたのだ。

 その映画「ストロベリーフィールズ」。女子高生が3人も死んで、幽霊になって帰ってくる物語。でも、再び辛い思いをして、生きている者と引き裂かれて行く。そこに込めた思いがあった・・。
 
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 可愛がっていた17歳の女優の卵がいた。わずか数年後に亡くなる。本当の話だ。世の中、間違っている。それからは生き残った僕がすべきことを考え続けた。その思い。映画「ストロベリーフィールズ」に託した。

 映画葬の夜、林田君にも同じ経験があったと聞く。その思いを映画に込めていたのだ。2人は同じ思いで、作品作りをしていたことを知った・・。

 死んで行く家族がいる。消えて行く仲間がいる。だから、その悲しみを胸に生き残った者が、その人の分もしっかり生きて行かねばならない。
 だから「ストロベリーフィールズ」のクライマックス、死神に連れて行かれるマキ(谷村美月)に、こう叫ばせた。

 「夏美。お前は死ぬなよ! 理沙や美香の分も生きるんだぞ!」

 林田君。そのシーンでも号泣したという。まさに彼自身が叫び続けていた言葉だったから。そして、それは彼自身にも向けられたメッセージであった。
 「堅太。お前は生きて映画を作れ! 映画監督になれ!」そんなふうに聴こえたに違いない。

 当時、すでに完成していた「ブリュレ」。「何としてでも公開せねば・・俺は生きて映画監督にならねば・・」そう誓ったに違いない。
 しかし、彼の砂時計。すでに残り少なく、2年少々しか残っていなかったのだ・・。

落ち葉の道.jpg

 先日。やっと映画が公開。初日は大入り満員。初日には駆けつけられなかった。が、HPを見ると、ブログを書いていた。撮影時の苦労や公開中のニュース。劇場にも毎日行っているとも書いていた。
 僕が「ストロベリーフィールズ」のときにやったこと。ブログを見て劇場に来てくれる人も多かった!とアドバイスしたのだが、ちゃんと実践していた。

 そんな彼、劇場での何度目かのトークショーのあと、仲間と飲みに行った。その夜は上機嫌で、みんなが帰ったあとも店で一人で飲み続けた。

 早朝。アパートではなく、飲み屋から近かった、編集室へ行って仮眠を取ったという。そこで彼は眠るように死んだ・・・。発見者である女性スタッフ、そう話していた。

 そのことが報道され、一時は減っていた客足が急に増えて、連日立ち見状態・・・。僕が行ったときも立つスペースさえないくらいの大入り。
 命と引き換えに大宣伝して映画をヒットさせた。でも、彼はその長蛇の列を見ることは、なかった・・。

(つづく)



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